SAD(社会不安障害)は人前で何かするときに大きな不安を感じたり緊張したりする病気です。今まで、性格の問題と思われていたあなたの不安は克服することができるかもしれません。
SAD(Social Anxiety Disorder 社会不安障害)をご存知でしょうか。
誰にでも苦手な場面、できれば避けたいシチュエーションというものはあります。大勢の前で話をしたり、歌を歌ったり、あるいは、初対面の人と会話をしたりするのは緊張してしまうものです。
SADは、このような緊張する場面で人よりも強い不安を感じます。また、他の人がなんでもないことにも緊張したり不安を感じたりするのです。
「自治会やPTAや趣味のサークルなど少人数のグループに参加する」「人前で文字を書く」「人のいるところで電話をかける」「喫茶店やレストランや居酒屋などで食事をしたりお酒を飲む」「自己紹介をする」「人の目をみて会話をする」「人の集まっている部屋に入る」「自宅に他人を招く」「外出先でトイレに入る」「公共の風呂に入浴する」「試験を受ける」「誰かを誘う」
このように、他の人にとっては緊張をしないような場面でもSADの患者は強い不安を感じ、「心臓がドキドキする」「汗が大量に出る」「手や足が震える」「顔が赤くなる」「息が苦しくなる」「声が上ずる」「のどが渇く」「たびたびトイレに行きたくなる」などの症状が出るのです。
SADの患者は、自分の苦手な場面を避けるために日常生活や学校や仕事に支障をきたしてしまいます。
ときには、SADが原因でひきこもりとなってしまうこともあるといわれています。
SADを放置しておくと、うつ病やパニック障害やアルコール依存症などの病気を発症することもあるのです。
「恥ずかしがりや」や「引っ込み思案」の性格であると思われていたものが、実はSADという病気なのかもしれません。
今までは、内気な性格とあきらめていたことが実はSADという脳内物質の機能異常による病気である可能性があるのです。
なぜ、SADを発症するのかそのメカニズムはまだわかっていませんが、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリン、セロトニン、ドパミンが関わっているといわれています。
SADの多くは思春期ごろに発症するといわれています。性格的なものであると思われていることから治療の機会を逃しているのです。
日本ではまだまだ認知度の低いSADのために病院を受診することもなく、治る病気であることも知らずに苦しんでいる患者が多いのです。
SADが発症すると、自信を喪失し、本来の能力を発揮できないことや、人前に出ることを避けようとするために、教育を受ける機会を失ったり、職業を自由に選べなくなったりと人生において大きな損失となってしまうこともあります。
「もしかしたらSADかも・・・」と思ったときには、心療内科や神経科あるいは精神科などを受診してみましょう。まだまだ、専門としている医師も少ないので、SADを診療している医師を紹介してもらってもよいでしょう。
家族や周囲が気付いたときには、SADという病気があることを説明し、心療内科などを受診することをすすめましょう。治る病気であることを理解させ、決して病院にいくことを無理強いしないようにしましょう。
SADの治療法は大きく分けて薬を使った薬物療法と心理的な精神療法の二つがあります。
薬ではSSRIという薬がよく使われます。SSRIはセロトニンのバランスを整え、依存性がなく、副作用が少ないのですが、効果が表れるまでには2週間から1ヶ月ほどかかります。1年以上継続的に服用します。飲み始めの1週間ほどは眠気やむかつきなどの副作用が現れることもありますが、一過性のものであり次第におさまります。
ベンゾジアゼピン系薬物は即効性がありますが、依存性のある薬物です。クロナゼパムはベンゾジアゼピン系のなかでも有用性があり、依存性も比較的低いのでSADの治療に用いられることもあります。
β遮断薬という高血圧の治療に用いられる薬もSADの症状によっては使われることがあります。
精神療法では、認知行動療法が行われます。
認知行動療法では、不安に思っている状況を思考パターンを代えたり、不安にとらわれない対処法を身につけることを医師やカウンセラーと一緒に行うものです。
副作用のない方法ですが、時間がかかること、技術を身につけた医師やカウンセラーが少ないことなどから、認知行動療法を行っている医療機関が少ないのが現状です。
また、精神療法では、森田正馬氏によって創始された森田療法も行われます。森田療法は無理に不安を取り除くことはせず、症状にとらわれないようにする療法です。
これらの治療法は単独で行われたり、併用して行われたりします。どの療法を選択するにしても、本人が積極的に治療に参加することが大切です。